蛭田まい(以下蛭田)
いわき市の子育てにまつわるさまざまなお話を伺うみんなでサポトーク。5月のゲストをご紹介します。「児童発達支援センターわくわくキッズ」管理者 新妻陽子さんです。よろしくお願いします。
新妻さん
よろしくお願いします。
蛭田
先週は「違いを理解する」とか「受け入れる」っていうことについてお話いただきました。
新妻さん
私、もうこの療育っていう児童発達支援の事業に関わっておおよそ17年ぐらいかなと思うんですが、1期生のお子さん、22歳で、なんと今年、大学院合格して、今大学院生なんですよ。
蛭田
すごいですね。
新妻さん
このお子さんは得意が勉強だったですね。そして、ご自分にもその診断があること、告知っていうんですが、私、告知のお手伝いも若干お母さんと一緒にしたんですが、それを受け入れていて。で、いろいろなエピソードはいっぱいあるんです。またやっちまったとか、時々は、もうこんな失敗ばっかりしてるなら死にたいとか言いながらですね。でも、自分には得意な勉強があって、研究をするんだっていうところで今頑張れています。随分たくさんの親御さんたち、お子さんたちと出会ったんですが、やっぱりそうやって泣きながら受け入れている親御さんたちともいっぱい出会ってきているので、受け入れるという作業が簡単ではないけどできるんだってことは知っています。
蛭田
いや、もう胸が熱くなりますね。得意なところをぐっと伸ばしてね、今元気にしてらっしゃるっていうお話が。
で、今日は、これまでの内容をふまえたこの子育てのノウハウと言いますか、そんなお話をぜひお伺いしたいなと思うんです。
新妻さん
はい、ありがとうございます。
今、受け入れてきたお母さんたちがおいでですよってお話した中で、やっぱり受け入れるっていう作業をできるためには、子育ての仕方、この子たちと共に進んでいく家族みたいな状況ってとっても大事で。以前の放送でも取説があって、みたいなお話をしたんですけれども、やっぱりこの子たちを育てるにはここのポイントを押さえてこういう風にしてほしいとかっていうのはあるわけでですよね。
で、私は支援する側なんですけれども、親御さんたちにお話しているのは、この子達のありようって言うんでしょうかね、そこは知ってほしいんだよねっていうことで、行動を見るってお話をしてます。どうしても、「もっと素直な性格になりなさい」とかね、「それやっちゃダメでしょ」とかって、反発されると言いたくなる言葉じゃないですかね。
本当は自分で着替えできるのに、してくれなかったりとかしちゃうと、「全く何甘えてんの!」とかって怒りたくなりますよね。
蛭田
そうですね。
新妻さん
「わがまま言わないの」っていう言葉って、どうしても親の口からついて出ちゃうじゃないですか。私は、それを一切なくせっていう気はさらさらないです。私たちも人間だし、当然言いますよね。中には、叱っちゃいけないって知ってんのに叱っちゃったって、私に泣きながら電話くださるお母さんもいるから、いいんだよって。逆に今辛いことは何?っていうお話をお母さんとしたりします。
世の中の子育て論に、こういう子育てしましょうっていう、最近だと、褒めて育てましょう、とかありますよね。で、それはとっても大事だし、うちも褒めるっていう作業はお母さんたちに勉強してもらって、実際やってもらってるんですけれども、そういう素晴らしいことをやろうっていうよりは、まずわが子を見て、「へえ、うちの子、こういう場面でこういう行動するんだ」とか、「へー、こんなことあるのね」みたいな姿をまず知ってほしくて。
子供が求めていること、例えばだったら、イタズラしてて思うことも、子供が好奇心を持ってなんかやっていたりとか、あとはそのルールを正しく理解してないからやっちゃうこととか、あるわけですよね。で、そうすると、「そっか」と。
例えばだったら、冷蔵庫の中から自分が欲しいものをゲットするために、手前にある食材や何かを全部引っ張り出して、その辺に散らかして、奥に親としてちょっと隠していた、置いといたジュースをゲットして、そのまんま冷蔵庫のドアも閉めず、ジュース飲んでご満悦。みたいな我が子を見ると、そりゃ頭に血が上ってカーッとして怒りますよね。
蛭田
はい。
新妻さん
怒っていいんだけど、なんでうちの子こういう行動したんだろうっていうのを、ちょっと落ち着いた時に見れると、ですよ。「この子、この冷蔵庫から物を取るお作法知らないわ」って思えばいいわけでしょ。そうしたら、どういう教え方しようかなって、次のしつけというか、教え方を親御さんとして見つけていけばいいわけですよね。
で、その教え方も、なんなら本当に相談してっていつも言ってるので、そこはこんな教え方しようかみたいなことをうちではやってるわけですよ。
子供はですね、求める行動ができるというのが、ほんと満足感につながるんですね。そして満足すると、次の知的好奇心を持てるので、どんどんそういその繰り返し、失敗も含めて自分の行動の繰り返しの中で育っていくんです。なので、親御さん、特にお母さんは、子供にとって成功も失敗も、何かをした時に、お母さんのところに戻ってきて安心できる安全基地であってほしいんですね。
蛭田
うん。
新妻さん
だから怒っちゃっても大丈夫だよって。そのあとぎゅってハグしてあげたらいい。その場ではもうイライラしてるからできなくても、そのあとご飯食べて、お風呂でも入ってゆっくりしたときにぎゅーっとしてあげて、「怒っちゃったけど、怒ったのはあなたが〇〇したからだよ。でも、あなたのことは大好き」って言えばいい。みたいなお話をしているんです。
なので、親と子の関係をお母さんたちが自分としてならどう作れるかをまずは第一にしていただくのが、これは発達障害があるなし関係なく、子育てをする親御さんには必要なポイントかなって思っています。
で、今、特に大事だなと思っていることは、 声掛け。
命令、あれしろ、これしろっていうのはいっぱいあるんだけど、触れ合うための声かけ。例えば、今もう春で、お花がいっぱい咲いている。花を見て、「このピンクのお花綺麗だね」とか、「お母さん、このお花見て嬉しくなるんだ」とか。「お母さん、こないだ自分が大事にしているボールペンが折れちゃって悲しかったんだよ」とかいう、感情のラベリングって言うんですけれども。
蛭田
はい。
新妻さん
感情を言葉としてお話してあげることって子供にとってとっても大事で。この言葉にたくさん触れる機会が今若干減っているって思っています。
ちっちゃい頃に、犬を子供が指差した時、「あ、ワンワンって言うんだよ。ワンワンいたね」とかっていう話の中で、子供たちは犬というものがワンワンで、そのあと幼児言葉から犬っていうんだっていう名詞を覚えていくんですよ。この作業をラベリングって言うんですけれども、感情もですね、やっぱりその時にはこういう言葉を使うといいね、みたいなことを知れることが良い。
「うちの子、感情のコントロールできないからさせてください」とかって言われるんですが、いやいや、まずまずもって、本人がイライラしてるってことを学ばないといけないし、「僕今イライラしてるんだ」っていうことを教えてあげるには、イライラしてるときに、そう言ってあげないと無理よって。
「え、そんなの自分で気づきませんか?」って言われてですね、それは無理よ、っていうお話をしてるんです。だから、子育てって、結構手間がかかるんです。
蛭田
うんうん。
新妻さん
「いちいちここまで?」って思うのはすごくわかるんですけど、やっぱり、「いちいちここまで」が大事なんですね。
そして、今、言葉をたくさん触れさせてあげてと言ったんですけれど、 発達障害のお子さん、確定診断って言いますが、その診断をお持ちのお子さんは、言葉がシャワーのように、あれしろこれしろって言われるのは、とっても苦手なんです。
だから、触れ合うために、お母さんがこんな感情があって、こんなふうに思ったよとか、この出来事の時にこんな言い方したよっていうのは、別に命令じゃないからいいんですけれど。学校から帰ってきて、「手洗って」、「ちゃんと宿題やったの?」「ちゃんとお箸出した?」「洗濯物ないの?」「明日なんか学校に持ってくものは?」みたいな声かけがあると。
蛭田
日常ですよね。
新妻さん
はい。でも、これは言葉のシャワーで、言葉のシャワーが突き刺さっちゃうとですね、痛くて聞きたくなくなるんですよ。
蛭田
耳をぱたって閉じちゃいます。
新妻さん
そうなんですね。なので、そういうことじゃなくて、親として感じたことを言語化、言葉としてあげて教えてあげる。本人が今感じてる時、ああ、今ね、あなたはね、嬉しいって感じてるんだよって言ってあげるとかいう、こういう言葉の触れ合いをたくさんしてほしいんですよ。
蛭田
うん。
新妻さん
言葉のシャワーは大抵の子はね、右から左に聞き流せるんですね。でも、発達系の子は1個1個すごく真面目だから、全部受け取っちゃうんですよ。
蛭田
そうか。
新妻さん
そう。それが苦しくなるので、声かけは1度に1個ずつ具体的で簡単にねみたいな言い方をするんですけれど、できれば、目で見てわかる情報も一緒にあげていただくと、とってもいいんですよ。
視覚優位っていう言葉があって、目で見る情報の方が高いから、目で見て教えましょうっていう言い方もあるんです。
ですけど、逆に、目の情報が強すぎて、目からの情報では脳の処理が追いつかないから、耳から教わった方がいいってお子さんもいてですね。
聴覚優位って言い方をするけど、聴覚優位より視覚優位すぎて、視覚情報処理不能っていう状況。この辺はやっぱりその取説というか、その子それぞれ別なので、うちの子にはどんな育て方がいいかは、できれば誰かにちょっとアドバイスを受けていただいたらなとは思うんです。けど、子育てノウハウって言い方ですると、やっぱり親子でどういう関係を作っていくか。違いがあろうがなかろうが共通のポイントで、私が、わくわくキッズにお通いの保護者さんにも、お母さんの産んだ子で大事な子だから大好きよはもう言葉に出して言ってあげていいし、泣いてるんだったら悲しいよねとか、嬉しくて泣く時もあるから、それは嬉し涙だねとか、教えてあげてねみたいなお話はしてますね。
蛭田
なるほど。感情を言葉に。
新妻さん
そうですそうです。気づかせてあげなきゃいけない、教えてあげなきゃいけない。これ、大抵の子でもへたっちょさんいっぱいいますよね。
蛭田
でも、そうですよ。大人になると、その普通に過ぎていっちゃうことが、子供にとっては、悲しいんだ、嬉しいんだってわからなかったり。
新妻さん
大人さんでもこれを言語化できない方が時々おいでなので。そうすると、もう遅いはないので、その方を傷つけない方法で、どういう風にお伝えするかは考えますが、私はお伝えしてますよ。
蛭田
こうやって、気づきを得られるのは、遅いはないと思いますね。うん。
いや、もうあっという間に今週もお時間となってしまったので、今日はこの辺で失礼いたします。
みんなでサポトーク。今日は、「児童発達支援センターわくわくキッズ」管理者 新妻陽子さんにお話を伺いました。ありがとうございました。
新妻さん
こちらこそありがとうございました。
蛭田
来週もいろいろなお話を伺います。どうぞお楽しみに。
<終わり>